デジタル活用で中小企業・組合の可能性を広げる

(企)プランツヘルパーすこっぷ|IT化とワークシェアリングで組織基盤を強くする、すこっぷの次のステージへ

 横浜市を中心に、お庭のお困りごとや庭木の手入れ・管理、設計施工を行う企業組合。ご家庭に加え、公園やマンション等公共施設の花植えや管理を任されるなど、年々成長を続けています。一方で管理業務も増え、担当者の業務量に比例して負担も大きくなっていました。今までのやり方ではいずれ業務が回らなくなる、危機感を抱いた組合はIT化によりメンバー(組合員)間で業務を分担できる環境と仕組みを整えました。

【課題】①リモートからアクセス・作業が可能な環境づくり②バックオフィス業務の“見える化”

 メンバーは基本、事務所に出勤しないで各現場に直接向かうことがほとんどです。ところが会議資料や規定などは紙や組合パソコンで保管されていて、出先では閲覧ができず、組合内の情報共有が課題でした。

 管理・会計業務は重複作業が何度も発生して流れが複雑になり、担当者しかわからない“ブラックボックス”化が進んでいました。そこに案件やメンバーの増加で、業務量も増えて担当者の負担は増々大きくなっていました。

 会計業務は、ソフトが入っているパソコンでしか操作ができず、担当者以外は触れない状態で把握が困難でした。最新の経営状況を把握する意味でも、不確定な経理体制を根本から見直し、リアルタイムで正確な情報の可視化が必要でした。

【導入】クラウドサービス「Googleアプリ」「Dropbox」「クラウド会計ソフト freee」の導入

 組合内の情報共有推進を目標に掲げた「IT化プロジェクト」を立ち上げました。

 最初に取り組んだのが、リモートから組合情報にアクセス、作業ができる環境の整備です。具体的にはパソコンまたはスマートフォンから全員が「Gmail」とクラウドストレージ「Dropbox」を使えることを目指しました。

全員がスマートフォン・パソコンに慣れることを第1にメンバー同士でフォロー

 メンバーのほとんどはパソコンを持っていない、またはwi-fi環境が整っていない等いわゆるIT初心者。メンバーからは「それって便利なの?」「やる意味があるの?」という声もありましたが、プロジェクトメンバーが地道に事務所や、ご自宅にお伺いして教えていき、毎月の定例会でもIT化の進捗状況を全員で共有して、1年かけて全員が扱えるようになりました。

 IT化の土台が整ったので次に「Googleカレンダー」に全員が業務予定日と稼働可能日を入力するようにし、パソコンやスマートフォンから誰でも確認できるようにしました。組合員の申請は従来のExcelファイルから、スマートフォンで入力できる「Googleフォーム」に切り替えを進めています。組合の書類は全て「Dropbox」に入れて、リモートでも情報を共有できるようにしました。

  会計業務を ①リモートでできる ②複数人で担当が可能 ③経理処理の自動化 で効率化して業務量を削減したいと考え、従来のインストール型の会計ソフトから、税理士の勧めでインターネットバンキングが使えて且つ会計知識が少ない者でも扱える「クラウド会計ソフト freee」の導入を決めました。

【効果】見える化と自動化で業務量が大幅削減!組合のガバナンスを強化

 全員のスケジュールが一目でわかり、連絡ミスが減って調整がスムーズになりました。作業場所やメンバー等必要な情報も登録できて便利です。

 Googleフォームは組合内の申請やワーク時間、業務報告で活用しています。入力した内容はGoogleスプレッドシートに自動で集計・出力されるので、メンバーの利便性が上がり、集計業務も効率化されました。

 クラウド会計ソフトfreeeの導入後は会計担当者を複数人にして、税理士も含めて担当者全員がリモートで入力、確認ができる体制に変えました。会計知識が少ない担当者でも扱いやすく、月次集計や部門別の売上高等のデータをワンクリックで抽出・出力できて経営会議でも助かっています。請求・売上・入出金管理等はfreeeに集約されたので、回収漏れの心配も減り、freeeでの一元管理が可能になりました。拡張性があるので効率化を図ろうと思えばいくらでもできそうです。

【展望】次のステージを見据えた組織づくりを

 今後のすこっぷの重要なテーマは「組織化」です。組織継続のためには、売上を維持、拡大することが必要ですが、そのためには組織の基盤づくりが大事だと考えています。

 これまでのように特定の個人の頑張りに任せるのではなく、組織としてみんなで共有・分担していく、「この人がいないと」をなくして誰もが担えるようになり、組織が回るようになる、デジタル化はそのための環境整備と仕組みづくりの手段です。そういった土壌を作っていかないと新しい人も入ってきませんし、安心して働ける環境をつくることも企業努力だと思っています。

 情報共有を進めて、少しずつですが以前よりメンバーから意見が出るようになってきたと感じます。今後はメンバーが理事の役割を順番に担い、組合業務への理解を深めることで、さらに組合運営に参画しやすい土壌づくりを進める予定です。 取り組みの一つ一つは地道ですが、ワーカーズらしく、下から積み上げながら組織を作っていきたいと考えています。

【経緯】中央会による支援と事業スケジュール

 中央会は、組合からの相談を受け、必要に応じた支援機関や専門家に繋ぐなどして伴走支援を行ってきました。

中央会による支援内容
  • ITを活用した業務改善について相談を受け、KIPと連携して外部の専門家支援を実施
  • 業務の洗い出しと取り組むべき優先項目について整理
  • 個別専門相談(税理士)で会計業務の課題を整理、本会より支援事業のご提案
  • クラウド会計ソフトへの移行と新たな会計業務フローの構築(専門家派遣による伴走支援)

事業スケジュール

IT戦略をつくる
組合内の情報共有推進を目標に掲げた「IT化プロジェクト」の立ち上げ

全員がスマートフォン・PCからアプリを扱えるようにメンバー同士でフォロー、組合内のIT活用への理解促進を進める

IT戦略をつくる
ITで改善する業務の洗い出しと選定

改善業務を把握するため、専門家の助言をもとに重複作業が多く発生する業務の洗い出し、改善業務の対象を選定

IT戦略をつくる・IT導入の準備
改善対象の業務の課題を専門家と整理、導入ツールの決定

業務課題の解決に適したITツールを選定。「Googleアプリ」活用と税理士の助言を受けて「クラウド会計ソフト freee」の導入を決める

ITプロジェクト進行(開発・導入)
ITを活用した業務フローの検討・システムの構築①

Googleアプリに置き換えた新しい業務フローを検討、仕組みを構築

ITプロジェクト進行(開発・導入)
ITを活用した業務フローの検討・システムの構築②

中央会の専門家派遣事業を利用。全体の業務の流れを踏まえつつ、「クラウド会計ソフト freee」を活用した新たな会計業務フローを検討、システムを構築

継続
運用・改善、メンバーのフォロー

目的としていた業務改善を達成、必要応じて改善・拡張も

企業組合プランツヘルパーすこっぷ

主な事業:園芸サービス及び造園工事の請負に関する事業

所在地:横浜市港北区大曽根二丁目5番11号コーポ幸101

組合員数:

● 導入ITツール:Googleアプリ、クラウド会計ソフト freee

● 導入・構築の費用:構築費用100,000円(1/2負担)+月額使用料 

● 導入ITツール:デジタル式ポイントカードシステム

● 活用施策:組織連携強化現地指導事業